ひょんなきっかけから企業経営のコンサルティングや経営者のエグゼクティブコーチングという仕事に携わるようになって20年以上が経ちます。

この仕事の最大の役得は、さまざまな業種や業界のさまざまな経営者や企業家のさまざまな組織のドラマに立ち会えることです。

私は映画やテレビや小説のドラマを観るのが趣味のひとつです。優れたドラマには優れたサスペンスがあり、サスペンスの優れた解消があり、巧妙に計算されたカタルシスがあり、涙や笑いや感動があります。それは脚本家や演出家が緻密にデザインし、役者たちが忠実に演技した作品です。

一方で現実世界のドラマには筋書きがありません。次に何が起こるかわかりません。経営者が決めることが次の展開を左右します。そしてどんなにパワフルなマネジャーでも展開をコントロールできることはありません。それぞれの責任と志と価値観において意思決定し、創り出したい未来を創り出すべく奔走し、ときに予想外の展開を見守るのみです。

その中で私の重要な役割のひとつは、経営の意思決定をサポートすることです。

さて、意思決定とは何でしょうか。決めるとはどういうことなのでしょうか。

ビジネスの世界の大半においては、与えられた状況に的確に対応して問題を解決することがマネジャーの仕事だと思われています。ついつい感情的に反応したり、十分に考えずに決めてしまったりするのをやめて、理性的に分析し、冷静に対処するのが最善だと考えられています。

私がコーチングやコンサルティングでサポートすることは、そういう問題解決や状況対応とは全く別種のことです。

どんな事業でも、どんな企業家でも、必ず実現しようとしている未来があります。目の前の難局に振り回されて見失っているかもしれないビジョンがあります。守るべき価値があり、生み出したい価値があります。

経営者の意思決定は、守るべき価値を守り、増やしたい価値を増やすための決断であり、行動です。そしてまだ見ぬ未来を創造するリーダーシップです。

作り物のドラマには、必ず大いなる挫折や葛藤が用意されており、あらゆる不幸や不運が待っており、主人公は運命に翻弄されながら成功したり失敗したりします。

現実のドラマには、天地がひっくり返るような革命や耳を疑うような裏切りは必要ありません。地道な努力が報いられ、成果が上がり、人や組織が成長することが標準です。

もちろんそれは簡単ではありません。簡単ではないからこそ、しばしば外部のコンサルティングやコーチングが導入されるのです。しかし私の役割は、驚きに満ちた現実のドラマを、成功が当たり前となる日常に近づけていくことです。

クライアントの人や組織の成功を祝福しながら、成功し続けることが当たり前になることこそが究極のゴールです。

コロナ禍においても経営者は毎日意思決定を迫られています。決めるとはどういうことなのか。それは、日々の大小の意思決定によって成果と成長が当然になるための新しい習慣を植えつけていくことだと思っています。