スティーブ・ジョブズは生前のある時期からいつも同じ服を着て同じ靴を履いていたことがよく話題になっていました。三宅一生デザインの黒のタートルネック、リーバイスの青いジーンズ、ニューバランスのスニーカーです。

マーク・ザッカーバーグも同様です。毎日のように同じ服装をしています。きっと憧れのジョブズの真似をしているのだろうという人もいます。

アルバート・アインシュタインもいつも同じようなスーツを着ていました。

いったい彼らはなぜいつも同じ服装なのでしょうか。

「服装選びに頭を使うと他の大事なことに使うエネルギーを消耗するからだ」ともっともらしく解説する人たちがたくさんいます。

それを聞くと私はおかしくて笑ってしまいます。

なぜかというと、クリエイティブな仕事をする人たちは、意思決定によってエネルギーを消耗するどころか、ますます元気になっていくからです。

決断や判断によって頭脳のエネルギーを消耗する、という神話は、少なくともクリエイティブクラスの人間たちには当てはまらない話です。

創り出す人は、創り出すための決断が楽しくて仕方ない。もちろんプロとして仕事するからには決断に責任を伴うし、頭も使うし、集中もするし、疲労もする。しかし意思決定のためのエネルギーを節約しておこうなどと考えることはありません。なぜなら、創り出せば創り出すほど人は元気になっていくからです。

スティーブ・ジョブズがなぜ同じ服装をしていたのかは本人に聞いてみなければわかりませんが、確実に言えることは、彼は次々と新しいものを創り出すことを心から楽しんでいたことです。そして創造のための意思決定は、エネルギーを消耗するものではなく、人を活気づけ、若返らせ、創造的にし、生産的にするものなのです。

もしあなたが意思決定に疲れ、エネルギーを消耗し、「もう何も決めたくない」「誰か自分の代わりに決めてくれ」と思っているとしたら、それはたぶん他人に押しつけられたやらされ仕事を嫌々やっているか、あるいは自分でやらなきゃならないと思い込んでいるルーチン業務を渋々やっているせいではないでしょうか。

もしそうだとしたら、それは変えることができます。

意思決定を創造的に変えること。それは可能なのです。