人材育成には無数の方法があり、その考え方も千差万別です。

育成計画を立てるには何が必要か、という理論もあれば、理論よりも仕事を任せて失敗しながら学ぶことを教えるべきだ、といった経験論もあります。人材育成を考える前の段階として、会社とはどういう存在か、組織の役割は何か、ジョブ型の雇用とメンバーシップ型とではどういうメリットやデメリットがあるのか、職場における心理的安全性はなぜ大事なのか、どのように安全性を構築し、働く社員の成長や企業の発展を促すべきなのか、など、具体的に考えれば数えきれないほどたくさんの議論や課題があります。

その中でMMOT(Managerial Moment Of Truth)は決定版と呼んでも大げさではないメソッドだと思っています。

MIT(マサチューセッツ工科大学)で経営学・システム思考を教えるピーター・センゲは、2006年に出版された著作に序文を寄せて、次のように語っています。

「長い年月にわたって無数の組織がこの課題(「どうやって真実を効果的に伝え合えるのか」という課題)に悩んでいるのを見てきた私は、本書の詳述するMMOT(マネジメントの正念場)は大いに効力のあるエレガントな手法だと思っている。」(Managerial Moment Of Truth 2006年 サイモン&シュスター社)

MMOTはシンプルな4つのステップで実施されます。
1. 現在の現実を認める。
2. 今の状況に至った思考プロセスを検証する。 
3. 何を変えるべきかのプランを作成する。
4. プランの進捗を見るためのフィードバックシステムを確立する。

これ以上ないほど単純明快なステップです。誰でも学んで活用することができます。期待と現実の間に差が生じたとき、その事実を認め、原因を探り、創り出したい成果を生み出すための計画と行動につなげることができます。

MMOTは1on1、チームマネジメント、プロジェクトマネジメント、戦略提携、組織開発などのさまざまな状況に応用できます。すでに他の方法が組織内に導入されている場合にも、その実践を活かすためのアプローチとして活用することができます。

ただひとつだけ留意点があります。それは真実(truth)を大切にすることです。現実を無視したり回避したり隠蔽したり歪曲したりする組織にとってMMOTは鬼門なのです。

真実は組織を変え、ビジネスを変える。MMOTは、どうやって真実を扱ったらいいのか、それがどうやって成果を上げ、人や組織を成長させるのかを教えてくれる方法です。