私たちは毎日生きていく中で無数の意思決定をしています。朝起きてから夜寝るまで、数え切れないほどいろいろなことを決めて動いています。

いつ起きるか。いつ食べるか。何を食べるか。誰と会うか。何の仕事をするか。どういうふうに仕事するか。急ぐか。ゆっくりするか。いつ休むか。どのくらい休むか。何をして休むか。何をして遊ぶか。いつ風呂を浴びるか。どのくらい風呂に入るか。いつ寝るか。

たぶんほとんどの人はこういう決定を無意識に下しています。何も考えずに自動的にしています。それで何事もなければつつがなく毎日が過ぎていきます。

それは呼吸のようなものです。生活や仕事の状況が目の前に姿を現し、「それじゃあ蕎麦を食うか」という具合に行動を決め、特に問題がなければ特定の言動を振り返ることもなく次の行動に移っています。

そして意思決定は蓄積します。毎日の決定と行動が私たちの仕事や人生を形作るのです。

一つひとつが優れた決定と優れた行動であれば、その蓄積は優れた業績や優れた人格へと結実します。

一つひとつが劣った決定と劣った行動であれば、その蓄積は劣った業績や劣った人格につながっていきます。

それはまるで呼吸のようなものです。

私たちは呼吸しないことには生きていくことができません。そしてほとんどの時間を無意識に呼吸して過ごしています。何も考えなくても息を吸っては吐いています。それによって生命活動が維持されています。

そしていい呼吸をしていれば健康が維持・増進され、悪い呼吸をしていると健康が害され、病気や死亡につながります。

呼吸は、訓練と規律によって改善し、健康を増進することができます。

全く同じように、意思決定も規律と訓練によって改善し、人生や仕事を発展させることができます。

そのためには自分が日常でどんな意思決定をしているのかを観察する必要があります。

なぜあのとき、そんなことをしたのか。

なぜそのとき、あんなことを言ったのか。

自分の言動によってどんな結果が生じたのか。

自分の無意識の意思決定によって何が起こったのか。

意思決定の裏側には私たちの思考・価値観・現実認識などが潜んでいます。これまでの人生経験によって培われた生活習慣や信念・心情などが潜んでいます。

22年前に私が縁あって始めたプロフェッショナルコーチングでは、コーチングを受けるクライアントの問題を解決するのではなく、クライアントがどういう意思決定をして今に至っているのか、どういう意思決定によって未来を切り開こうとしているのか、を丁寧に紐解いていきます。

そして意思決定の背後にある価値観や志、悪癖や思考パターンなどが明らかになると、クライアントは自分の意識によって学び、行動し、成長し、成熟するチャンスを獲得していきます。

そうなればしめたものです。クライアントは新しい呼吸の仕方を学び、呼吸するように意思決定していきます。今まで気づいていなかった認知の癖に気づき、自分にとって有益な新しい習慣を身につけていきます。

意思決定は、そういう意味で、呼吸にとてもよく似ているのです。