「自分の人生という映画、これから何が起こるのか楽しみすぎる」

いつも中村食堂でお世話になっている田口絵未花さんがこんなことを言っていたのが印象的です。しかもこれはかつて途方もない失敗をして仕事をクビになった話をした後のことです。

自分の人生を謳歌するというひと言では語り切れない、重要なヒントがここに隠されています。

先の見えない困難な状況で、なんとか先の一手を考え、あれこれ試行錯誤して道を切り拓いていく・・・これは今の時代のどんな人にも必須の生きる姿勢ではないかと思います。そのときに状況に翻弄されてパニックし続けるのでは、効果的な行動をとることができません。

困難な状況に距離を置き、いろいろな角度から現実を見定め、自分の創り出したい未来の視点から働きかけていく必要があります。

意味のわからない状況を観察し、意味を見出して行くプロセス、これをセンスメイキングと言います。

意味のわからない不確実で不透明な状況において、ひたすら情報収集や状況分析に明け暮れていても時間ばかりが経過し、有効な意思決定ができません。不完全な情報を前提としてあれこれ動き、動く中から見えてくる新しい現実に意味を見出し、自分の目的に沿った創造的な決断を下していかなくてはなりません。

そのとき、問題に苛まれた個人的な主観だけでは認知を歪めてしまいます。その場に居合わせた仲間や関係者の作り出す空気に流されても埒があきません。現実から適切な距離をとり、問題解決とは違う角度で観察する必要があります。

そう、まさに映画を見るかのように、観客席から眺めることが必要なのです。

センスメイキングにふさわしい距離と角度、当事者である現場との近さだけでなく、傍観者としてのディスタンスを求められるのです。

現実に真正面から向き合って突破しようとする態度は常に称賛と尊敬を集めます。危険な状況におけるリーダーシップの特徴であり、指導者が決して失ってはならない資質です。しかし同時に、状況を離れたところから一望し、時間をかけて意味を見出していくセンスメイキング、対話を通じて意味を共有している活動の重要性も忘れてはならないのです。