何かを見たり聞いたりしたときに
「これはあれと似ている」
「これはあれの一種だ」
と自分の知識や経験と比較して、その差分で理解することを差分思考と呼びます。
私たちの多くは日々の暮らしの大半を差分思考で過ごしています。何かを見た瞬間に自分の馴染みのカテゴリーに分類し、「わかった」つもりになるのです。多くの場合、それで支障なく暮らしていけます。
しかし差分思考では本当に新しいことを学ぶことができません。新しいことに接しても「これはあれに似ている」と差分でしか理解せず、それそのものを見て感じて味わうことができないのです。
それそのものを見て感じて味わって学ぶには、「似ている」「あの一種だ」「このカテゴリーだ」という差分思考を排除し、まっさらな状態から考える必要があります。これをオリジナル思考と呼びます。自分の知識や経験のカテゴリーを棚上げし、それそのものを見て感じて味わうのです。
そしてオリジナル思考を実践すると、日々の暮らしが一新します。見たこともない異国に旅したときに見るもの聞くもの全てが新鮮で感動的に思えるのと似ています。
オリジナル思考は新しい領域の学習のために決定的に大切です。旧い知識を捨て(unlearnし)、真新しい知識に触れなくてはなりません。
歳をとって経験を重ねるほどオリジナル思考が大変になることがあります。老いた犬に新しいトリックを教えられない、と諺で言うのはこのことです。オリジナル思考は天真爛漫の自然体ではできず、規律と意識を持って意図的に発動せねばならないのです。
新しい先生から学ぶときは、これまでの知識や経験を棚に上げ、真新しい自分で弟子入りする必要があります。それができず、差分思考でいる限り、新しい料理の味は永遠にわからないのです。
オリジナル思考はAI時代の大人の学びにとって必須のスキルです。