本物の音楽家は音楽を楽しむ者であり、本物の政治家は政治を楽しむ者だ。

そういう言葉があります。

音楽家と政治家に限らず、真の職業人は自分の仕事を心から楽しんでいるのではないでしょうか。

もちろん、仕事を楽しめば何とかなるというものではありません。プロの仕事には責任や義務などの重荷があり、予算や納期などの制限があります。素人には荷が重いからプロに頼むのであり、誰にでもできることではない仕事だからこそプロが引き受けるのです。

しかし職業に慣れ親しみ過ぎてしまうと、かつてあったはずの楽しみを忘れ、義務を果たすためや目標を達成するためばかりに働くことになってしまう人も少なくありません。

これは自慢ではありませんが、私は今の自分の仕事を本当に心から楽しんでいます。退屈することは一切ないし、かと言ってあまりにも荷が重くてストレスに苦しむこともありません。クライアントから依頼される仕事は難解で、明快な答えの見えないものばかりです。否が応でも自分の無知を思い知らされます。しかしだからこそ依頼のたびに自分のできることを考え、アイデアを出し、真新しい気持ちで取り組むことができます。ときどき自分でひらめいてスタートする仕事は、たいてい前例のない斬新なもので、一から何かを生み出す作業です。

もちろんこれまでも経験や知識は役に立ち、同僚や仲間たちとの対話から創り出すこともあります。思いの外うまくいくこともあれば、意外なほど苦戦することもあります。どちらにしてもずっと学んでいくプロセスです。その学びこそが楽しみの源泉なのです。

昨夜の研究会セッションでは、無用な対立を生み出す政治家に代表される「危険人物」について知り、強力な対立屋に直面したときに自分たちに何ができるかを考えるという、極めて深刻で困難な課題を取り上げました。

「危険人物をリーダーに選ばないために」の著者ビル・エディは、この難問への明快な対応と注意事項を著作にまとめ、自分のウェブサイトで知識やノウハウを開陳しています。

STARクラブの研究会では、ビル・エディの著作や教育プログラムを参照しながら、それを自分たちで咀嚼し、自分の力で活用し、現実場面で実践することを狙って対話や演習を行っています。

この課題は決して愉快な対象ではありません。本を読んだら実行できるというほど簡単なものでもありません。

しかし研究会では、ときには談笑し、ときには遊び、まるでゲームのように楽しみながら新しいマテリアルを学んでいます。

深刻な現実を前にしてしかめ面をするのではなく、遊戯やユーモアを持って突入していくこと。

プロの仕事には遊びを楽しむ精神が必要なのではないか。どんな状況でも自分の望む世界を生み出していく創造性が大切なのではないか。

そう思っています。