本屋に行くと、ビジネスに関する書籍がたくさんあり、本を読んだら何でも学べそうな気がする。

ビジネススクールで学ぶ戦略・財務・マーケティング・オペレーション・数理解析・組織行動論などは、わざわざ1年も2年もかけて修士号(MBA)をとらなくても本で学べそうな気がする。

授業を受けるにしても、今では無償または安価なオンラインプログラムで十分学べそうな気がする。

実際、MBAプログラムのカリキュラムに含まれる知識は、本屋に並ぶ書籍やネットに載っている情報で99パーセント学べそうな気がする。

では2年間もビジネススクールに通って学ぶのは無駄なのか。

もちろんそんなことはない。

教室の内外で精魂傾けて学ぶのは、印刷物の活字やネット上のデータに還元される知識だけではない。知識は重要だが、知識そのものは主役ではない。脇役だと言っていい。

では主役は何か。

それはもちろん考える力だ。

考えると言っても、ビジネスにおいて考える力とは決断する力に直結する。人生においては何日も何週間も何ヶ月も何年もかけてじっくり考えることも大切だが、ビジネスにおいては極めて短い時間に大きな決断を下すことが求められる。10年後や20年後に決断するのではなく、今この場で決断するのだ。

そして決断は単なる机上の空論ではなく、行動を伴うものでなければ無意味だ。もちろん教室や学校で行う決断は、実際の行動を伴うものではなく、あくまでもアカデミックなシミュレーションに過ぎない。つまり安全で、危険を伴わない空間における思考訓練・決断トレーニングである。

知識の大半は書店・図書館・インターネット空間に存在し、極めて手軽にアクセスできる。

しかし整理された知識を獲得するだけでは思考力・決断力は獲得できない。自ら考え、自ら調べ、自ら決断し、決断した内容を対話や議論によって検証し、他者を説得し、他者に説得されるプロセスが絶対に必要なのだ。

そのために必要な緊張感は、2021年現在ならネット上でも得ることができる。安全で、危険を伴わない学習空間は、ネット上でも確保できる。ただし、目的と覚悟を持って参入しないことには確保できない。

どんなにたくさんの情報に囲まれていても、思考力と決断力を訓練するには明確な目的と安定したガイダンスが必要なのだ。

それは本物の生涯学習である。学校教育だけで完了することはない。老若男女、誰でもいつでもどこでも学んで向上することができる。ディベート道場やSTARクラブ(構造思考実践研究会)、マスタークラスや読書会を開催しているのは、学んで強く優しく賢くなるチャンスを誰にでも提供したいからだ。

そして来春からはディベート道場 for kids を開催する。

こどもディベート教室ではなく、ディベート道場 for kids である。自分の頭で考え、自分の目と手で調べ、考えたことを他人に伝えて議論し、対話し、決断する。思考力と決断力の訓練はいつからでもスタートできる。そして終わることがない。自分の目標と人生状況に合わせていつまででもどこまででも訓練できるし、訓練しがいがある。