独立して自分の会社で仕事するようになる前の15年間で4回転職し、5つの会社に勤めた。10年弱勤めた最初の会社では異動・転勤によって6つの職場で働いた。11の職場の中には地獄もあれば夢の職場もあった。地獄から天国に移ったときはなかなか信じられなかったが、錯覚などではなく、それが現実だった。

その経験から言えることがある。

どういう環境で仕事をするかによって自分のパフォーマンスはピンからキリまで上下する。自分の充実感や働く喜びも全く変わってしまう。もちろん周囲の評価も一変する。

今の仕事がきついから転職しようかと考える若者に向かって、「どこへ行っても人間の世界だから苦労するのは同じだ」などと訳知り顔の助言や説教をする大人がいるが、一体どういう経験的データによってそんな一般化ができるのだろうか。

1998年から始めた経営コンサルティングの仕事で観察したことの中でも、人が移動や転職によって環境を変え、劇的に発展したケースを何度も見た。ひとつの職場でうだつが上がらず、ほとんど実力を発揮できなかった人が、自分の意志や周囲の支援によって別の職場に行き、別人のように生き生きと働き始めたりするのである。

人は環境によって大きく影響を受ける。ある環境で全く芽が出ない人を別の環境に放り込んだら水を得た魚のように活躍することがある。転職して環境を変えようと考えるのはいいことだ。

ただ、嫌だから辞めるというのではなく、何を変え、何を創り出さんがために転職するのかをよくよく考えることが大切だ。