世間ではたいていの人が利己主義を悪いものだと思っている。人は他者を助けなければならない、助ける義務がある、自分のために生きるなどというのはわがままであり、そんな勝手は許されない、と思っている。エゴイズムが諸悪の根源だと言う人も少なくない。

私も幼い頃からそう教えられ、ときに反発しながらも、人がこの世に生を受けたのは世のため人のためであって、自分のためではない、という利他主義の考え方がいつのまにかすっかり染みついていた。

私が世間の主流の利他的な考え方が間違っていることを悟って払拭できたのは、アイン・ランド哲学に出会ってからだ。アイン・ランドは利他主義を真っ向から否定し、人類の幸福は完全な個人主義・利己主義に立脚するしかない、と喝破した。これは風変わりな哲学者の偏見や個人的見解ではない。客観的現実に基づいた倫理体系である。

もし人が他者のために生きなければならないなら、その他者は誰のために生きるのだろうか。やはりその他の誰かのために生きるのだろうか。その誰かとは誰なのだろうか。

かつて人は神のために生きるとされていた。あるいは王様のため、主君のため、独裁者のために生きるとされていた。神が死に、王様がその座を追われ、封建的な主従関係が時代遅れになり、独裁者が邪悪と見なされるようになった現代社会で、人は社会のために生きるべきだとされている。

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