9月からSTARクラブ(構造思考実戦研究会)でセンスメイキングをテーマに取り上げています。

センスメイキングというのは昔からある方法ですが、私たちの住む世界を深く理解するために観察を重ね、人文学的方法によって文化を理解しようとするアプローチです。

世間ではAIの発展に押されて全てをアルゴリズムで理解できるという錯覚が蔓延しています。ビッグデータを大量に解析することによって人間の思考や行動を科学的に理解して操れるという誤解が広まっています。

STARクラブで取り上げているセンスメイキングは、現実そのものをありのままに見て、変えようとする前に理解しようとするオリジナル思考に根ざしています。

いつもセンスメイキングが必要なわけではありません。すでにわかっていることを既存のカテゴリーに分類して整理し、効率的に仕事をすることも大切です。オリジナル思考ではなくカテゴリー思考、センスメイキングではなくアルゴリズム思考が必要な場面もたくさんあります。

企業の経営においても、すでに成功パターンを発見し、それを展開して拡大することによって成長を図ることはとても大切です。全てのビジネスを新たな挑戦のように一から扱うのは時間と資源の無駄です。

しかし誰かが新たな領域を開拓しなくては、既存の知識や方法は古びてしまい、ビジネスも人生も停滞の方向に向かっていくしかありません。

組織や社会において未知の分野の冒険と既知の知恵の活用の両方が求められるのと同じように、個人のキャリアや人生においても積極的なリスクテイクと保守的なリスク回避の両方が求められるのです。

私たちの人生にはいつだってある種の冒険が求められています。就職したり結婚したり子育てしたりするのは常に冒険です。しかし冒険だけで生活は成り立ちません。住居や家庭や収入や財産の維持や管理も必要です。

もし冒険と安定の両立ができなければ、人生は危険極まりないジェットコースターになるか、退屈極まりないローテーションになってしまいかねません。

もし冒険と安定の両立ができるなら、人生も社会ももっとずっと豊かになり、自由になり、創造的になるでしょう。

センスメイキングは、私たちがいつ、どのように、どんなバランスで冒険と安定を選択するのかを考える上でとても重要な道案内をしてくれる方法だと思っています。

STARクラブでは引き続きセンスメイキングを探求し、世界を理解して世界を変えていくための知的体力を養うための生きた知識にしていく予定です。